日別アーカイブ: 2012年5月12日

部会長所信

『所信』
本年度、青年部会長となるにあたり、所信を申し上げます。
ちょうど私たちの親世代、つまり「団塊の世代」が60歳を過ぎて「高齢者」の年代になってきました。日本国内では、生産年齢が激減して高齢者が激増することで、消費の減少、医療費等の国民負担の増大などが近年、徐々に顕在化してきています。また、国際情勢の悪化に伴う金融不安定、石油価格の上昇も、産業や私たちの生活に大きな影響を及ぼしています。それに追い討ちをかけるように、東日本大震災を契機として、原子力発電所事故によるエネルギー不足、国内産業の海外移転といった問題も発生しています。これらのことから、消費者に将来不安感を抱かせてしまい、安ければ安いほど良いという価格競争がさらに進展し、「デフレ」の状態からなかなか抜け出せないのです。
建築業界も例外なく価格競争に巻き込まれ、安い仕事で数をこなさなければならない薄利多売のビジネスモデルが消費者に浸透しています。このことは、日本のどこに行っても同じ景観が広がることにつながりますし、「職人」が減少するという大きな問題にもつながっています。ベテランの職人がどんどん退職期の年齢を迎える中、技術の継承ができず、建築物の耐用年数が減少、設計を具現化する技術を持った職人がいなくなるのが、現実味を帯びています。建築士会綱領の1つ目にあります「われらの建築は人類の幸福のため最良の芸術たるべし」の実現が厳しくなります。
建築士会に目を向けますと、こちらも高齢化が進行し、会員数が減少の一途をたどっています。当富山県建築士会の会員年齢構成をみますと、その約半数が50歳代以上です。建築士会綱領の2つ目に「われわれ建築士は社会の発展のため最新の指導者たるべし」とありますが、新入会員が減少する中、指導者のリーダーとしての建築士会が、10年後、20年後どうありたいのか、そのためには今何をすべきなのか、考え、行動しなくてはなりません。
青年部会は、40歳以下の会員で構成されていますが、この人数も減少し続け、現在は約370人となっています。その半数近くは30歳代後半です。このままですと、5年後、10年後には、青年部会の担い手がいなくなり、ひいては前述のように建築士会の担い手がいなくなることにもなります。
その危惧に直面しているのは各支部における活動です。各支部にも青年部会がありますが、その役員の担い手不足はかなり深刻です。2~3人で事業を行うのは常で、中には青年活動を維持できなくなった支部があるとも聞いています。建築士会綱領の3つ目に「わが建築士会は会員の向上のため最善の団結たるべし」とありますが、会員の向上とは何か、団結するためにはどのような体制・事業を仕掛けていくのが良いか、将来を担う建築士として真剣に向き合っていくことが急務であります。
このような閉塞的な状況だからこそ、私は言いたい。
「人と人とがつながり 高めあい 輝く建築士になろう」
これは私が部会長として決意した私の理念です。
この理念を具現化するため、次の4つの方針をたてました。
1つめは、「青年建築士が自分自身の技術を向上する」です。
建築に対する社会的要請は高度化しています。昨年は、東日本大震災を契機として、地震直後の支援、原子力発電所事故によるエネルギー問題、建築の耐震化、被災地の復興といった諸問題にも遭遇しました。会員それぞれが技術の向上を目指し、将来に渡り建築士として活躍していくための日々のステップアップ、向上心を持ちましょう。
2つめは、「建築関係青年の連携を強化する」です。
将来の富山の建築まちづくりを担っていく上で、まず欠かせないのが連携です。スマートフォンを持つ人が増え、ソーシャルネットワークサービスが拡大しています。それに伴い、経済活動や防災面で良い効果が実証される一方、顔と顔を突き合わすコミュニケーションの不足がより顕著になるといった問題が浮き彫りになっています。
まずは私たち自身が連携を備えないことには始まりません。委員会を県東部と西部の2つの地域に再編することで、顔と顔とを突合せやすい環境を創出するとともに、適正なスタッフ人数を確保して、よりよい事業の実施に努めてまいりたいと存じます。
その先に待っているのは技術の伝承です。建築士がきっかけとなって地域の職人をはじめ向上心のある者がつながりあい、良いものを広げていく。それが私たちの役割だと存じます。
3つめは、「建築だけでなく様々な分野の専門家との連携を推進する」です。
前述のとおり、社会はますます多様化・複雑化していきます。通り一遍では通らない世の中になり、複雑な問題には諸処の専門家がチームとなって対応することが必要になってきました。あらゆることにアンテナを張り巡らせ、建築以外のことも積極的に耳を傾けるよう、意識していこうではありませんか。
最後の4つめは、私が一番お伝えしたいことであります。
以上3つの成果を社会に公開することにより、建築士のプライドとやりがいを向上する」です。
活動がやりっぱなしでは、良い循環につながりません。実施した事業の成果を公開し、広く意見を聴くことで、自分たちの良い面に気づいたり、もし悪い面があればそれを直したりしてステップアップできます。そして次の事業、世代につなげましょう。
諸先輩方、そして皆様の努力により、この青年部会は、素晴らしい成果を残してきました。とりわけ、昨年度まで実施してきました「県産材こどもの城づくり事業」では、県産材活用の普及啓発だけではなく、地域との交流や我々建築士のスキルアップにも貢献してまいりました。これまで培ってきた青年建築士の火を絶やさず、未来に向けて楽しみ、建築の仕事がもっともっと誇りを持てるものになるよう、皆さん団結し、目標ある事業をつくっていきましょう。どうかみなさん、私があげた4つの方針が実り、「輝く建築士」となれるよう、どうぞよろしくお願いします。
平成24年5月12日
社団法人富山県建築士会
青年部会長 野村 和則