平成12年度 第31回富山県建築賞受賞作品

一般の部

入賞 富山県総合福祉会館(サンシップとやま)

h12_sun01

h12_sun02

建築主
富山県知事 中沖 豊
設計
池原義郎・建築設計事務所
施工
佐藤工業(株)北陸支店 林建設工業(株) 前田建設(株) JV

講評

社会福祉活動の公的拠点施設と福祉活動者の養成・教育施設という異なる機能を、低層部と高層部に明確に分節させ、その分節が空間構成、構造形成、また意匠形態において徹底されている。この分節による空間的な分離を両者を貫く大きなアトリウム空間によって統合し、この空間が同時にランドマーク的なシンボル性を建築に与えている。この計画、デザインの論理的明快さ、徹底性が評価された。ガラスと鉄骨の透明感のある意匠は、この設計者特有の緻密なデティールと相まって、全体構成の大胆さと部分の繊細さがユニークな調和をもたらしている。優れた施工がこれを可能にした。また、かつて「舟橋」があったと言う敷地の歴史に関するレファレンスを、平面計画の上で、また高層部の形態において採っていることも評価された。

【竺 覚暁】

入賞 PARFUM DOUX

h12_parfum01

h12_parfum02

建築主
(株)ボン・リブラン
設計
(有)見浦建築設計事務所
施工
(株)竹中工務店北陸営業所

講評

菓子店とレストラン、小宴会が開けるバンケット・ルームから成る商業施設であるが、狭嗌な敷地のなかで、これらの機能を明確に仕分けつつ、それらをつなぐ主動線とサービスの動線を干渉させることなく手際よく捌いたことが評価された。円筒ヴォールト状の屋根が全体の形姿を和らげるとともに建築にシンボル性を与え、ライト・ブラウンの煉瓦タイルのテクスチュアと屋根や開口部にもちいられた緑青状の色彩の扱いも成功している。また南側に付された小庭園とその道路との取り合いが、街の景観と環境に寄与している点も評価される。

【竺 覚暁】

入賞 大門町新設保育所建設工事(きらら保育園)

h12_kirara01

h12_kirara02

建築主
大門町長 田所 稔
設計
(株)押田建築設計事務所
施工
高田建設(株) 射水建設興業(株)  JV

講評

0才~2歳児、3歳児、4歳児と異なった発達段階での保育を分離しつつ統合したゾーニング・プランが評価された。共通・管理部門をRC造とし、保育部門を木造とした混構造で、RC造の屋上部分を遊び場として利用することで、幼児の遊戯空間を立体化しバラエティをもたせている。内部の木材の質感を生かした意匠も、幼児の身体的な特性を考えたものとなっていて評価できる。ただ、外観の形姿に関しては中央塔屋のヴォリュームなどプロポーションにもう一工夫あっても良かった。

【竺 覚暁】

入選 特別養護老人ホーム だいご苑

h12_daigo01

h12_daigo02

建築主
特別養護老人ホーム だいご苑 理事長 高嶋 一正
設計
(株)新建築設計事務所
施工
川田工業(株)

講評

建築東西軸に沿って中央に大きな内部空間をとって、コミュニティ空間、共通空間、通路を配し、この周囲に居室や管理、サービス、サポート部門を分節室配して、複雑な養護老人ホームの機能を手堅く纏めていることが評価された。この中央空間は一階から二階、屋根のトップライトへの部分的に吹きぬけてあり、陰鬱になりがちな病院的施設空間に、開放性とシンボル性を与えて施設全体に一種華やかさをもたらしている。こうした点は老人ホームの建築にとって重要であろう。またデティール設計に老人に対する安全性の配慮がなされていることも評価された。外観については屋根を寄せ棟にしたことで周囲の景観に対する負荷を軽減しているが、ファサード構成について配慮の欲しいところである。

【竺 覚暁】

入選 魚恵

h12_uoe01

h12_uoe02

建築主
浜出 勝之
設計
山口孝芳建築設計事務所
施工
寺崎工業(株)

講評

和風木造の割烹料亭で、基本的には切り妻屋根を架したごく普通の現代数寄屋のデザインであるが、この切り妻屋根の下に、妻側にむくり円弧を描いた庇を回すことによって、外観の印象を一変させ、ピンクの基調とした色彩と相まって、南蛮風というかエキゾティックな感覚を創りだしたことが評価された。この曲線は波のイメージであるとのことだが、楕円形の窓や壁面に描かれた線、門の屋根等に繰り返されてこの印象を強めている。しかし正面二階部分の窓およびそれに連続する窓が通常のサッシを用いた矩形窓であるのは惜しまれる。

【竺 覚暁】

入選 八尾ゆめの森 ゆうゆう館

h12_yuuyuu01

h12_yuuyuu02

建築主
八尾町長 吉村 栄二
設計
(株)田村・水落設計
施工
日本海建興(株)  (有)協和建設 JV

講評

宿泊しない一般入浴客も利用する温泉施設と宿泊滞在施設の複合した機能を手堅く整理して計画したことが評価された。内部意匠も手堅い。外観は切り妻瓦葺きの屋根を重ねて周囲の景観との調和を計っている。しかし全体の形姿としては、二つのポーチと階段室塔屋部分の比例など、一工夫必要であろう。
「特別養護老人ホームいなみ」
一階に管理、サービス諸室を配し、居室群と食堂、浴室、交流広場など入所者の日常生活機能をすべて二階に纏めた明快なゾーニングが評価された。内部意匠において木質を多用し、伝統和風デザインをアレンジしたデティールを用いて、特に居室などに家庭的な雰囲気を出していて老人に対する配慮が見られる。付属デイケアセンターの屋根、本屋二階浴室上部の屋根、交流広場上部トップライトの屋根に緩い円筒ヴォールト状の屋根を掛けてアクセントをつけて、統一感ある外観構成を創り出すと同時に、周辺の景観に大して調和を意図していることも評価される。

【竺 覚暁】

入選 特別養護老人ホーム いなみ

建築主
井波町長 清都 邦夫
設計
(株)創建築事務所
施工
辻建設(株) タカハタ工業(株) 藤井工業(株)  JV

講評

一階に管理、サービス諸室を配し、居室群と食堂、浴室、交流広場など入所者の日常生活機能をすべて二階に纏めた明快なゾーニングが評価された。内部意匠において木質を多用し、伝統和風デザインをアレンジしたデティールを用いて、特に居室などに家庭的な雰囲気を出していて老人に対する配慮が見られる。付属デイケアセンターの屋根、本屋二階浴室上部の屋根、交流広場上部トップライトの屋根に緩い円筒ヴォールト状の屋根を掛けてアクセントをつけて、統一感ある外観構成を創り出すと同時に、周辺の景観に大して調和を意図していることも評価される。

【竺 覚暁】

住宅の部

入賞 「富山県の自然、風土にあった建築様式を取り入れた住宅」山田邸

h12_yamada01

h12_yamada02

建築主
山田 逸成
設計
ミツデザイン設計事務所
施工
高田建設(株)

講評

富山県の民家の伝統的デザインの一つである吾妻建様式を現代和風で再構成した住宅であって、この点が評価された。納屋門と蔵、本屋という建築構成が踏襲されるが、納屋門は倉庫と車庫に充てられ、また本屋の構造には「ワクノウチ」構造はなく、その空間もなく、プランは通常の現代和風住宅のものである。吾妻建様式は従って外観のデザインにのみ継承的に実現されていて、それは成功している。

【竺 覚暁】

入選 ケヤキ並木に立つ家

建築主
永田 正忠
設計
(有)見浦建築設計事務所
施工
日本海建興(株)

講評

RC造三階建ての二世代住宅で、それぞれの所帯空間の分離と接近、また共用空間の配置など輻輳した空間配置を、三階建という条件のなかで、適切に計画していることが評価された。外観の意匠は住宅としてはやや硬く、情緒に乏しい憾みがあるが、インテリアの意匠は繊細で落ち着いており、要所に象徴性も見られ、優れている。

【竺 覚暁】

入選 東中野の町家(半田邸)

建築主
半田 豊和
設計
草野鉄男建築工房
施工
タカノ建設(株)

講評

この住宅も、一種、吾妻建の現代化と言って良いデザインである。外観もそうだが、構造および空間においても、一階居間上部に吹き抜ける空間が吾妻建の手法である。さらにこの住宅は、材料に徳島の木頭杉を使い、全面的に伝統工法を用いて施工するなで、デザイン、材料、構法、工法にわたって伝統の継承と再生を試みたことが評価された。

【竺 覚暁】

入選 中島邸移転増築工事

h12_nakajima01

h12_nakajima02

建築主
中島 治
設計
市堰建工建築設計事務所
施工
市堰建工(株)

講評

明治末期(19世紀末)に建造され、後に造作部が改造されていた吾妻建住宅を解体移築し、その過程で復元を行うとともに、一部に改築を加え、さらに増築をした住宅である。「ワクノウチ」構造とその空間、またそれを取り巻く座敷などの諸室は造作調度を含めて殆ど完全に保存されている。全体の形姿も旧状を残したデザインである。文化財的価値のある歴史的建造物を復元保存しつつ、最小限の改築と増築を加えることによって、現代生活に適応させ、再生させた点が評価された。

【竺 覚暁】