平成19年度 第38回富山県建築賞受賞作品

一般の部

入賞 長谷川病院 建替整備計画

長谷川病院

建築主
医療法人社団 長谷川病院 理事長 長谷川 眞常
設計
(株)日建設計大阪オフィス一級建築士事務所 常務執行役員 設計部門代表 中井 進
施工
真柄建設(株)富山営業所 所長 栗林 哲郎

講評

診察受付ロビーにラウンジを加え、広く取られた患者溜まりの空間を、接客空間ととらえ、魅力的な室内意匠を施して、患者の不安を和らげて受け入れる雰囲気を創っている。個々の診察に対応する診察待合ロビーを別に設け、ここも患者をリラックスさせる親密で寛いだ雰囲気の空間としている。またほぼ真西に面する正面ファサードに45度に振った壁を雁行させて、室内への西日の入射と全面道路の交通騒音を和らげ、南からの採光をすると同時に、平板になりがちなファサードを奥行きと陰翳のあるものにしている。また動線計画にも優れている。施工も優れている。

入賞 射水市立大門小学校

射水市立大門小学校

建築主
射水市 射水市長 分家 静男
設計
富山県建築設計監理協同組合 理事長 押田 洋治
施工
鹿島建設(株)、射水建設興業(株)、髙田建設(株) JV (代表) 鹿島建設(株)富山営業所 所長 石田 友秋

講評

敷地を南北に走る「散歩道」と称する校地内メイン・ストリートを設けてアプローチとなし、その西側にランチルーム、特別教室、体育館、プールを配し、東側に校舎とグラウンドを配した機能的な配置計画が優れている。オープン・スクール・システムを採る校舎棟の可動間仕切りによる二クラス単位での空間利用も可能にするフレキシブルなシステムを作り出している。中庭を介して校舎棟内特別教室とクラス・ルームが回遊性をもって繋がれている。ステージを持つ楕円形のランチルームの造形に優れている。また体育館の軽快で実内に圧迫感を与えない構造も評価される。施工も優れている。

入選 よいとこ井波

よいとこ井波

建築主
南砺市 南砺市長 溝口 進
設計
富山県建築設計監理協同組合 理事長 押田 洋治
施工
辻建設(株)、(株)嶋組 JV (代表) 辻建設(株)南砺支店 支店長 辻 正博

講評

井波、八日町通りを訪れる観光客誘致のための複合施設であるが、木造町家造りを基本とした町並みと調和し、違和感のないデザインである。特産品ショップ、飲食店、工房、研修室、池波正太郎小博物館など多様で異なった機能を持つ各部を、一階では中庭に連なる路地空間、二階では「立体路地」と称する廊下状のペデストリアン・デッキで繋ぎ、それらを階段でもって要所で繋ぐ立体的な回遊性を創っていて、優れた動線計画による空間の魅力的シークェンスが創造されている。木造構造が顕しになった伝統的町家のトオリニワ空間を思わせる吹き抜け空間も美しい。施工も精緻である。

入選 魚津市立すずめ児童センター

魚津市立すずめ児童センター

建築主
魚津市 魚津市長 澤崎 義敬
設計
(有)建築科学研究所 代表取締役 原 英高
施工
山形建鐵(株) 代表取締役社長 山形剛

講評

前面に事務室、児童クラブ室などの各室を並べて手前に傾斜する片流れ屋根を架け、背面へ向けて低くなっている敷地にその大空間の遊戯室を配して、道路側からの建物のプレゼンスを抑制して、圧迫感のないアプローチを作り出している。地元産を主とした国産の杉の製材品を用い、極力、伝統的な仕口、継手工法を用いた架構を創っている。とりわけ遊戯室の筒状の大空間を覆うトラスは独創的で美しく、魅力的名空間を創り出している。木構造の高度の施工が行われている。

入選 富山県弁護士会館

富山県弁護士会館

建築主
富山県弁護士会 会長 今村 元
設計
(株)森俊偉プラスアルコ建築・計画事務所 代表取締役社長 森 房子
施工
塩谷建設(株) 取締役社長 塩谷 雄一

講評

建物前面にエントランス・ロビーを置き、これを二階分吹き抜けた空間とし、二階への階段を配し、小規模な建築だが伸びやかな内部空間を創っている。またこのことによって同時に前面のファサード・デザインの自由性を確保し、同寸の透明、半透明のガラス・パネル、不透明のパネルをランダムに配して、内部が適宜透けて見える変化のある魅力的なファサードを創り出している。この手法は二階から三階への階段室にも適用されて成功している。ピロティに載せて背面にL字型に突出させた二階の部分に法律相談室を配して相談者のプライヴァシーに配慮したプランニングを行っている。二つの独立した機関の事務室や会議室など、また駐車場など複雑な機能を手際よく捌いたプランニングに優れ、施工も精緻である。

住宅の部

入選 +135°のいえ(本郷のいえ)

+135°のいえ(本郷のいえ)

建築主
小林 格之
設計
計画創造ピュア建築士事務所 稲垣 英優
施工
(有)ピュア・ハウジング 代表取締役 稲垣 英優

講評

矩形平面に135°の角度でもって矩形のリヴィング・ルームを貫入させた特異な平面と床をスキップさせつつ三階にした構成が相まって、小屋組を顕しにした吹き抜け空間やポケット的空間を持つ魅力的な空間を創っている。この空間はまた、薪ストーブを用いた暖房の暖気循環が考慮された結果でもある。狭小な敷地を効率よく利用し、連続した敷地内にある両親の家に対する相互のプライヴァシーの確保にも意を用いている。伝統的木造構法とRC増を併用した混構造で優れた耐震性能を確保している。

入選 シアターホールリビングの家

シアターホールリビングの家

建築主
山本 明彦
設計
聖建築設計事務所 石村 聖一郎
施工
辻建設(株) 代表取締役 中嶋 光隆

講評

狭い短冊形の敷地に建つ両側面が壁で閉ざされ、内部に吹き抜け空間を創って内に開く、典型的な町家型の住宅であるが、二階書斎コーナーのデスク下に置かれた液晶プロジェクターで、吹き抜け空間上部の壁に画像を投影して、空間の拡がりの感覚を与えている。家屋最後部の室を畳敷きにし、裏の坪庭を望ませて和室的な空間を創っている。この室の屋根が二階のルーフテラスとなっており、そこからも庭が望める。狭隘な敷地の中に変化に富む立体的内部空間を創造することに成功している。