投稿者「jimukyoku」のアーカイブ
令和5年11月10日(金) 富山県建築設計会館3階
令和4年度 第11回建築功労賞受賞者
4つの専門職域から4名が表彰されました。
第11回建築功労賞受賞者

建築大工
稗苗 良二(集英工務店)
在来工法による仕事を多く手掛け、永年の研鑽により伝統的建物の再建や修繕などの仕事にも携わってきた。
後進の指導に関しても職業訓練校や、高校、専門学校などで指導に努めてきた。

防水工
下田 誠士((株)プラテックス)
大規模な屋上や大型タンクの防水施工に携わってきた実績を持ち、若手社員の資格取得のための指導など後進の育成にも積極的に取り組んできた。

配管工
西田 康政(西田工業㈱)
配管施工の責任者として多くの公共建築物の施工に携わり、配管工法のプレハブ化を推進するなど、業界の発展にも寄与してきた。
また、実地試験技能検定の検定員を永年にわたり勤めるなど後進の指導に取り組んできた。

造園工
高田 敏充(㈲高田造園土木)
公共工事民間工事ともに実績を持ち、新技術の習得にも積極的に取り組むなど地域の業界の発展にも寄与してきた。
また、造園組合が行う技術講習の講師を勤めるなどして後進の指導にも取り組んできた。
令和4年度 第53回富山県建築文化賞建築賞受賞作品
審査総評
今回は一般部門で7点、住宅部門で6点の応募がありました。審査員6名は各々に異なるキャリアで培った見識をもとに作品を評価し、推薦する作品の何に価値を見出したかについて意見交換を行いながら審査を進めました。
1次審査は応募書類で行い、一般部門は7作品中4作品、住宅部門は6作品中3作品が現地審査の対象に選ばれました。現地審査は2日をかけて8作品を見て回り、事業主や設計者との質疑応答も行いました。最終審査会では8作品について意見交換を行った後に、6名の審査員が各作品に点数をつけ、合計点数の高い4作品を入賞作品に選びました。次に4作品の中から優秀賞を2作品、入選を2作品選びました。
一般部門では、公共の大規模施設でなければ入賞は難しいのではないかという認識がなくなり、様々な規模・種別の建築の応募がありました。優秀賞に選ばれた「花水木の庭(広場路の長屋)」は、敷地内で完結することなく、街の賑わいや人々の活動を誘発する斬新なコンセプトを実現し、小規模民間施設でも地域に貢献できることを示す秀作でした。入選に選ばれた「砺波市立砺波図書館」は、大屋根の下の本に囲まれた大空間が魅力であり、景観・計画・技術・環境など、現代の公共施設に求められる要件を高い水準で満たしていました。
住宅部門では、新築・改修を問わず、施主の夢の実現に応える設計者のデザイン手法の違いを見比べることができました。優秀賞に選ばれた「クラハウス」は、明治期・昭和期の土蔵空間に居住空間を挿入し、さらに令和の表現を付加することで、時間軸を挿入された住空間の魅力を感じました。入選に選ばれた「庭を眺める家」は、伝統的日本住宅の部分改修ですが、伝統的表現の良さを次の時代にも継承しようとした姿勢やその技術が評価されました。
入賞にはなりませんでしたが、子供たちが楽しめる様々なアイディアを盛り込んだ「ナツドマの家」や、地方都市の建設会社の社屋イメージを開放的な空間に変えようとした「株式会社藤井組新社屋」も優れた作品でした。
優れた建築に百点の答えはありません。建築の評価は、時代背景や場所性、見る人の見識により異なります。一つひとつの作品の背後には図面や写真では表現できない様々な苦労があったはずです。現地審査での質疑応答から、この時代、富山県という場所で関係する方々が何を夢見て様々な困難を克服されたかを見極めようとしました。現地審査に常連のように説明に来られている設計者の熱い思いを聞いていると、富山県建築文化賞に応募してアピールできることが、富山県で頑張る設計者の一つの目標になっているように思いました。
【審査委員長 蜂谷 俊雄】
一般部門
優秀賞 花水木ノ庭ー広場路の長屋ー


- 所在地
- 富山市南田町1-4-3
- 建築面積
- 258.39m²
- 延床面積
- 317.65m²
- 竣工
- 2020年6月16日
- 建築主
- 沼 哲夫、沼 節子、沼 俊之
- 設計
- 合同会社 dot studio 一級建築士事務所
- 施工
- 前田建設㈱
講評
応募書類を見たとき、最初は花水木通りに面した落ち着いた街並みに違和感なく埋め込まれた建築の、それでいて個性的な内部の空間構成の面白さに目が行きました。しかしその後、実は埋め込まれたものの核心が、建築物そのものというよりも、むしろ建築と街との新たな関係性、さらに言えば、街に集う人々との新たな関係性、そのつながりの質を生み出す仕掛けにあると知って驚きました。1階の正面に店舗があり、その奥側に駐車スペースとイベントなどに使用できるシェアスペースが設けられています。そしてこれらが「広場路」と呼ばれる空間でつながっています。広場でありながら車路であること、それは車の出し入れをするたびに、広場を使っている人たちに場所を空けてもらわなければならないことを意味します。そのちょっとした不便が、会釈だけの他人めいた関係性でなく、同じ空間を分かち合って使う者同士が声をかけ合い譲り合う共感性、時にはそれがきっかけで一緒にイベントや会話を楽しむ、そういったつながりを生み出す仕掛けとなっています。住まいとして適切にプライベートを守りながら、人と人をつなげるさまざまな工夫が実体の建築空間を通して表現されています。そしてこの建築が引き寄せるかのように、近隣には新たな店舗が生まれ、人々の往来も増えつつあるとのこと。こうして街に撒かれた種が、今後さらに美しい花を咲かせて豊かな実を結んでいくことを楽しみにしています。
入選 砺波市立砺波図書館


- 所在地
- 砺波市幸町4-1
- 建築面積
- 2819.48m²
- 延床面積
- 3342.62m²
- 竣工
- 2020年7月30日
- 建築主
- 砺波市
- 設計
- 三上建築事務所・押田建築設計事務所建築関連業務共同体
- 施工
- 佐藤工業・砺波工業共同企業体
講評
砺波市の中心部で、チューリップ公園や四季彩館、文化会館、砺波高校などの観光施設や文教施設の近くに新たなランドマークとして誕生した市立図書館。
館内は、緩やかに弧を描く杉板の乱張りで仕上げた一枚の大天井で覆われ、西側1階の閲覧室から東側2階の学習コーナーに至る大空間は、荘厳さを醸しながらも暖かい雰囲気で来訪者を包み込みます。
外に出て国道156号側から外観を眺めると、水平ラインを強調したガラスの連窓が外部と内部の一体感を生み出し、明るく来訪者を迎え入れます。この建物の特徴である、捻じれた曲面の屋根は全体的に緩い勾配で、黒を基調としたシックな仕上げにより圧迫感を全く感じさせず、中に大空間があることを不思議に感じます。
空調には地中熱利用のシステムを採用し、バックヤードを除く大部分の空調エネルギーを地中熱で賄い、環境にも配慮したサスティナブルな施設となっています。
運営面では新しい蔵書の検索システム導入や、講演会・朗読会など各世代が参加できるイベント開催など積極的な活動で、開館5ヶ月で来館者10万人を達成したということです。この図書館がこれからも永く市民に愛される、新しい文化の発信拠点になってくれると確信しています。
住宅部門
優秀賞 クラハウス


- 所在地
- 滑川市常磐町
- 建築面積
- 156.45m²
- 延床面積
- 216.35m²
- 竣工
- 2020年8月30日
- 建築主
- 法澤 龍宝
- 設計
- ㈲法澤建築デザイン事務所
- 施工
- ㈲法澤建築デザイン事務所
講評
空き家や朽ち果てた家の増加は、富山はもちろん、日本じゅうで大きな問題となっています。土蔵は厚い土壁に覆われメンテナンスや補修しにくく、非常に多くの土蔵が、壁の一部が崩落したり、周囲を覆っているトタンが朽ち果て、内部に残されているモノとともに、時間が止まったかのようにひっそりと建ち続けています。
「クラハウス」は、この問題に正面から対峙し、土蔵や古民家を時代を超えて如何に継承していくか、そのひとつの手法を明確に示しているものです。
設計者は、明治・大正・昭和を経てきた建物群の補修の相談を受け、所有者と相談の上、最終的には土地と建物を自ら取得し、単に仕事というだけでなく、家族やくらしをかけてリノベーションしたのです。
計画にあたり、建物と周囲のまちの歴史的な変遷をしっかり調査・記録し、その時間の流れの延長としてこのプロジェクトを位置付けています。その結果、これは単にかたちだけのリノベーションではなく、時間を盛り込んだ建物と土地と地域の持続可能(サスティナブル)な継承プロジェクトとなっています。
設計においては、空間構成から素材に至るまで、古いものを再現するのではなく、新しい対比するものを加えることで、対比的調和が実現されています。例えば、土蔵内部に新たな構造面を独立して設けることで構造・法規上の問題を解決しながら、土蔵の古い壁を残し、新旧の壁の間に時間を超えた空間が生み出されています。
入選 庭を眺める家

DSC_0425

- 所在地
- 高岡市出来田
- 建築面積
- 327.10m² 改修部分:114.00m²
- 延床面積
- 327.10m² 改修部分:114.00m²
- 竣工
- 2020年6月8日
- 建築主
- 瀬尾 良信
- 設計
- 荒井好一郎建築設計室一級建築士事務所
- 施工
- (分離発注工事 代表施工者)當田建築
講評
広さ約100坪の木造平屋建の住宅。建物正面から見て左右の区画は手をつけず、真ん中の区画のみの部分改修です。
改修前は、広大な庭を望む南向きの和室2間と、廊下を挟んで北側にDKや水回りがあり、DKから庭を見ることはできませんでした。改修により、これらの区切りを取り払ったことで、以前は客間や和室からしか眺めることのできなかった庭が、普段の生活空間で愛でられるようになりました。庭に面した南側には、断熱性と意匠性の高い大きな木製サッシの窓が配され、庭が生活の中心へと引き込まれています。外とのつながりや広がりを感じられ、心地よく過ごせる場所となったのです。
印象的だったのは、改修しなかった既存区間と新たな改修区間との境目が、あえて曖昧な空間としてデザインされていること。そこには、既存素材や工法への深い理解と敬意を持ちながら、あくまでも新旧の融合を楽しむブリコラージュ的な感性が漂います。
手を入れるのは最小限ながら、既にあるものの潜在的ポテンシャルを最大限に引き出し、機能性や居住性を増幅させる。これだけレバレッジが効いているのは、建物の声なき声に耳を傾ける謙虚な姿勢、関わった人々の確かな知識と技術があるからこそ。
機知に富む創造性で、今あるものをもっとステキに作り変える。手仕事やものづくりを熟知し、熟練の技を持つ人々だからこそ実現しえた、新しさで古さを駆逐してしまわないリノベーション。新旧のグラデーションが家の可能性をさらに引き出しているのを感じました。
2023年1月号企画情報とやま317
リンク
2022年12月号企画情報とやま316
リンク
2022年11月号企画情報とやま315
リンク
2022年10月号企画情報とやま314
リンク
2022年8月号企画情報とやま312
リンク
2022年7月号企画情報とやま311
リンク
2022年6月号企画情報とやま310
リンク
創立70周年記念講演「~つながったバトン 未来につなげるバトン~」アーカイブ配信について
令和4年5月28日開催の創立富山県建築士会70周年記念講演会のアーカイブ配信(YouTube)をしています。
創立70周年記念講演会YouTube動画(3部構成)
2022年5月号企画情報とやま309
リンク
2022年4月号企画情報とやま308
リンク
富山県建築士会70周年記念事業について(終了)
2022年3月号企画情報とやま307
リンク
公益社団法人富山県建築士会役員改選について
富山県建築士会役員(理事・監事)の任期が、今年5月末に開催予定の総会までとなっています。このため、次期役員を選任するための手続きについてお知らせします。
次期役員の推薦あるいは希望される方は、これらの規程をご覧いただき必要な手続きを行なってください。詳細はこちらをご覧ください。
2022年2月号企画情報とやま306
リンク
令和3年度 第52回富山県建築文化賞建築賞受賞作品
審査総評
審査委員会は6名の審査員で構成され、各々に異なるキャリアで培った見識をもとに作品を評価し、推薦する作品の何に価値を見出したかについて意見交換を行いながら審査を進めました。1次審査は応募書類で行い、一般部門は11作品中5作品、住宅部門は6作品中3作品が現地審査の対象に選ばれました。現地審査は2日をかけて8作品を見て回り、事業主や設計者との質疑応答を行いました。最終審査会では8作品について意見交換を行った後に、6名の審査員が各作品に点数をつけ、合計点数の高い5作品を入賞作品に選びました。次に5作品の中から優秀賞を3作品、入選を2作品選びました。応募総数は昨年の23作品に対して今年は17作品に減りましたが、今年は特に一般部門の応募作品のレベルが高く、入賞作品数が昨年より多くなりました。
一般部門では、公共の大規模施設でなければ入賞は難しいのではないかという認識が薄れ、公共・民間合わせて様々な用途・種別の建築の応募がありました。優秀賞に選ばれた「富山銀行本店」は、ウイング・ウイング高岡の完成以降進んでいなかった高岡駅前広場において、駅の整備に続く広場の顔となる大規模オフィスの整備です。巨大なアルミルーバー・スクリーンとその夜の光の演出により、地域の銀行として駅前広場の景観に貢献することで高岡を元気にしようとする企業の意思が伝わってきました。また、「海王丸パーク駐車場トイレ」は、小規模な公衆トイレではありますが、名建築としての要件を備えた外観や空間構成が高く評価され、公衆トイレのイメージを変える作品でした。入選に選ばれた「Domaine Beau」は、自然豊かな丘陵地に建つワイナリーですが、遠景~近景の様々な視点において、ワインレッドの環境アートのように映る魅力ある建築でした。また「富山県議会議事堂リニューアル」は、谷口吉郎氏が基本設計の監修を行ったモダニズム建築の特徴を残しながら、内装の主材料を繊細な木リブにすることで、今の時代感覚に相応しいイメージに改修していました。
住宅部門では「街なかのライトコートハウス」が優秀賞に選ばれました。狭小住宅のライトコートに、諸スペースをスキップフロア形式で絡めながら、空間の広がりや視線の誘導が巧みに演出され、書類審査では把握できない狭小空間の魅力を現地で感じました。今年は住宅作品の応募が少なく低調でしたが、現地審査後の採点では本作品のみが全審査員が高く評価し、住宅部門で唯一選ばれることになりました。
6名の審査員の各々が採点し、合計点により入賞が決まる審査形式でしたが、審査員によって強く推薦する作品が異なりました。設計者の独善的なコンセプトや論理は、建築設計を専門とする審査員には理解できても、一般の審査員には理解されないこともあります。その意味において、本建築賞に選ばれた作品には誰からも理解される建築の魅力があったと思います。
【審査委員長 蜂谷 俊雄】
一般部門
優秀賞 富山銀行本店


- 所在地
- 高岡市下関町3-1
- 建築面積
- 971.52m²
- 延床面積
- 6422.06m²
- 竣工
- 2019年11月14日
- 建築主
- ㈱富山銀行
- 設計
- ㈱日建設計一級建築士事務所
- 施工
- 清水建設・佐藤工業・石黒建設・砺波工業・寺崎工業JV
講評
県西部の玄関口である高岡駅前広場に面する富山銀行本店。創業以来、産業の発展を支え、地域とともに育んできた「郷土愛」が結晶化されたような建築物です。全長40m・65段からなるアルミ製の水平ルーバーは、日中は「金属のまち高岡」を象徴するような、素材感際立つ凛としたファサードとなり、日没後には高岡の自然や文化の魅力を映し出す大きなスクリーンとなります。ルーバー下面に配列された1,046本ものフルカラーLEDが、間接光となって大壁面を優雅にたゆたい、時季に合わせた演出プログラムによって駅前の景観を上品に彩ります。
合理性・経済性が最優先にされがちな一民間企業のオフィス建築ながら、これほどまでに美しいまちの顔としての存在感を示せるのかと驚きました。特にライトアップに関しては、巨大な屋外広告物となるため計画の段階から行政との入念な協議を踏まえ、「郷土愛」を主軸に産官学民の様々な主体を巻き込んだ整備が進められた点、また、完成後の発展的な活用を前提として、人々の目を楽しませるという付加価値を追求している点に、地域を支え地域とともに歩む地元銀行としての矜持と覚悟を感じました。
企業の価値と地域の価値をしっかりと結び付けて考え、経済性・合理性と美意識・個性を両立させ、理想と現実のギャップに真摯に向き合い、一企業が地域にできることを最後まで模索し続ける姿勢が、この建物に体現されていると思います。
まちの風景は、そこに暮らし、訪れ、関わるすべての人々の活動の結果できあがるものです。駅前の景観を変え、道行く人々の意識を変え、ひいては地域の価値を高める美しい装置であると言えます。
優美な外観に対して、裏側には強い意志が垣間見えます。
優秀賞 海王丸パーク駐車場トイレ


- 所在地
- 射水市海王丸町15
- 建築面積
- 157.6m²
- 延床面積
- 157.6m²
- 竣工
- 2017年12月17日
- 建築主
- 富山県
- 設計
- ㈲青山建築計画事務所
- 施工
- ㈱牧田組
講評
公園にある公衆トイレはこの程度で良いという固定観念が社会にあります。これに対し、本トイレには名建築と呼べる建築デザインの要件が揃っていて、それが合理的かつローコストで実現されていました。小さなトイレであっても、それは建築であり、建築としての威厳を保つことの意義を見せてくれました。
中央に通風・採光のための光庭を配し、それを囲むように対称配置の男女のトイレがあり、さらにその外周に回廊が回っています。単純明快な平面構成を前提に、2方向の出入口、人が佇む回廊状の庇下空間、プライバシーと解放感を満足する開口部など、公衆トイレに必要な機能性を巧みに備えています。さらに、庇を支える列柱を前面に出したシンプルな外観はプロポーションが良く、西欧の古典建築を想起させるものがあり、また、必要最小限の要素で建築を表現するレス・イズ・モアに通じるイメージもあります。
次に事業主の取組姿勢について述べます。小規模建築ではありますが、景観上重要な場所ということで設計者選定プロポーザル方式によって本案が選ばれ、高いレベルの公衆トイレが実現できたことは高く評価できます。
しかし、現地を見ると、その周囲には無造作に配置されている自動販売機、キュービクル、トイレ誘導サインがあり、景観を損ねていました。トイレ単体の管理はできていますが、駐車場エリア全体の景観を考慮したエリアマネジメントがなされていないことが残念でした。
入選 Domaine Beau


- 所在地
- 南砺市立野原西1197
- 建築面積
- 946.95m²
- 延床面積
- 794.01m²
- 竣工
- 2020年2月28日
- 建築主
- トレボー㈱
- 設計
- ㈱創建築事務所
- 施工
- スター総合建設㈱
講評
このワイナリーは、南砺市立野原の自然豊かな丘陵地に建設され、マタドールレッドの外壁がランドマークとしての存在感を主張しつつも、見事に周囲の緑に溶け込んでいます。外壁は地場産材のアルミ鋳物で、表面に凹凸のある名栗紋様を施し、陰影に奥行き感を与えて季節や天候、時間により様々な表情を見せます。
建物は物販エリアと製造エリアに分かれますが、北側に面した物販エリアからは砺波の散居村や二上山、遠くは富山湾まで一望でき、また製造エリアのタンクや作業風景を観察できる内窓が設けられています。内部の壁面には外壁の仕上げを連続させ、一体感のある意匠となっています。製造エリアの醸造機器は、イタリアやクロアチア製の最新設備が導入され、この地のワイン造りに適した環境が整っています。
過疎化が進み耕作放棄地が増えていましたが、この地をフランスのブルゴーニュ地方に似ていると考えられた施主は、熱い情熱をもってぶどう園とワイナリーを作り、果
樹の郷として蘇らせ、今後さらにカフェ・レストラン、パン・チーズ工房、グランピング会場などを整備する構想を持っておられます。
このワイナリーから、南砺の新しい文化が生まれ、発信されていくことが期待されます。
入選 富山県議会議事堂リニューアル


- 所在地
- 富山市新総曲輪地内
- 建築面積
- 2196.8m²
- 延床面積
- 6030.72m²
- 竣工
- 2017年8月11日
- 建築主
- 富山県
- 設計
- 富山県建築設計監理協同組合
- 施工
- 辻建設・石坂建設・村松建設JV
講評
この県議会議事堂は、もとは50年前(1971年)に竣工したもので、正面と側面に配置された3階までの高さの御影石の列柱とその上部に載るマッシブな4階部分、それらで構成された端正なプロポーションと緻密でリズミカルな配置構成、4層吹き抜けのエントランスホールなど、上質なモダニズム建築としての風格が強く感じられるものでした。富山の建築文化を支えてきたこの議事堂も、その後の基準改定や外装・内装材、設備等の老朽化により、耐震補強をはじめとする様々な機能改善が求められるようになり、改修にあたっては、構造、機能面はもとより、いかにして、もとのデザインが有していた社会的、文化的価値のエッセンスを損うことなく現代の洗練を加えて次代に継承していくかということが重要なテーマになったと思います。今回のリニューアルは大規模な改修だったにもかかわらず、その仕上がりからもとの建築への深い敬意が感じられるとともに、木製ルーバーを用いた繊細で温かみのあるデザインにより、現代的な親しみやすい建築として再生されています。当時の最善が尽くされた建築に敬意を払い、そこに現代の新たな価値を加えてより良いものとして引き継いでいく、あたかも「連句」のようなデザインに、建築としてのひとつのあるべき姿を見たように思います。
住宅部門
優秀賞 街なかのライトコートハウス


- 所在地
- 富山市下新町
- 建築面積
- 94.79m²
- 延床面積
- 172.72m²
- 竣工
- 2018年10月3日
- 建築主
- 永山 敬健
- 設計
- 富田愛子建築設計事務所
- 施工
- 五十嵐建設㈱
講評
多くの人にとって、家をつくることは一生に一度か数回しかない一大事であり、自分たちの家族と暮らしを見つめ直し、様々な期待やイメージを抱きます。しかし、それらの期待やイメージは漠然としており、それらに具体的なかたちと秩序を与えることが建築家の仕事です。建築家は、住まい手がイメージできない長期的な視点や、様々なノウハウを持っていますが、一方で住まい手とのやり取りを通じて、建築家だけでは思いもつかない様々なアイデアや工夫が生まれてくることも多々あります。この住宅は、そのような住まい手と建築家の理想的なコラボレーションがつくりあげた唯一無二の「暮らしの場」です。
ハウスメーカーやデザイン会社からのいくつもの提案にピンとこなかった住まい手に対し、建築家はひとつの案や自分のスタイルを押し付けるのではなく、何が求められているのかを検証するために、いくつものスタディー案を提示し、それらの具体的な形をもとに住まい手と建築家の議論が繰り返されました。その結果、オープンガレージ、ライトコート、スキップフロアなど、この住まいを特徴づける重要なコンセプトが生み出されました。この家ではすべての空間において、住まい手の暮らしぶりが手に取るように伝わってきます。このようなプロセスを経て生み出されたこの家は、住まい手の家族の成長とともに年月を積み重ね、ますます味わいが増してくることと確信します。
令和3年度 第10回建築功労賞受賞者
3つの専門職域から3名が表彰されました。
第10回建築功労賞受賞者

建築大工
松田 昇(松田建築)
唐破風や城郭風など日本特有の建築技法も取り入れ、家の外観や内部の造作を工夫し、日本の気候風土に適応した住みよい和風木造住宅を数多く施工している。
後継者育成の面では、長年にわたり若手大工の指導・育成に努めてきている。

防水工
竹橋 俊之(北川瀝青工業㈱富山支店)
発電所や学校、工場などの大型施設の新設や改修工事において、防水施工を多数の現場工事で手掛け、防水関係の資格を多数取得して、現場での基幹技能者として活躍している。
後進の指導にも熱心に取り組んでおり、若手社員の技能士試験の指導にあたり、後輩2人の1級技能士資格取得につながったことなどのほか、若手技能者の技術向上に尽力した。

瓦葺工
濱田 亨(㈲ハマダ工業)
伝統的な工法を踏まえながら、耐風や耐震に優れた最新の工法を採用した瓦葺工事を手掛け、円熟した技能で住宅や神社・仏閣など数多くの建築物を施工している。
後継者育成の面では、長年にわたり若手職人の指導・育成に努めてきている。



