平成21年度 第40回富山県建築賞受賞作品

一般の部

入賞 富山県立黒部学園

建築主
富山県 富山県知事 石井 隆一
設計
(株)創建築事務所 代表取締役 藤井 均
施工
[第1工区]
(株)関口組・大高建設(株)JV 代表 (株)関口組 代表取締役 関口 鉄雄
大高建設(株) 代表取締役社長 大橋 聡司
[第2工区]
桜井建設(株) 代表取締役 油谷 俊行
[第3工区]
千田建設(株) 取締役社長 千田 記也

講評

この施設は知的障害児施設であるが、あくまでも子供たちが集い暮らす「家」という視点で造られている。児童の生活を考慮して、プライバシーの確保から集団生活に適応するためのパブリックスペースまで、キメ細かい配慮とデザインがなされている。ユニットケアという観点から、中庭を内包したユニットが自然と関わりながら廻遊性をもたせ連続させてゆく動線計画に工夫がみられる。複雑なプログラムと既存の建物を使用しながらの建て替えという困難を乗り越えて、豊か空間を持つデザイン性の高い建築である。

入賞 富山市大庄地区コミュニティセンター

建築主
富山市
富山市長 森 雅志
設計
アーキヴィジョン広谷スタジオ
代表取締役 広谷 純弘
施工
スター総合建築(株)寺林建設(有)JV
代表 スター総合建築(株) 代表取締役 蔭島 邦男
寺林建設(有) 代表取締役 寺林 敏昭

講評

立山連邦の有機的な曲線と、杉の角材を用いた外壁の直線とが対比して、美しい佇まいをみせる建築である。中庭をはさむL型の平面は、ともすれば長い動線空間が必要になるのだが、廊下をギャラリーと見立て、ハイサイドライトが入るアート空間として来場者を導く。ギャラリーの各所にはアールコーブのような溜まりの場を設け、開口部の高さの変化により外部空間とうまく関連づけ、さまざまな交流の場を演出している。空間の連続のさせ方、デザインの完成度の高い建築である。

入選 富山市立中央小学校

建築主
まちっこ富山アイ・イー・エス(株) 社長 石橋 正孝
設計
(株)日総建 設計2部長 露木 正嘉
施工
松井建設(株)石坂建設(株)JV
代表 松井建設(株)北陸支店
取締役執行役員支店長 村田 一雄
石坂建設(株) 代表取締役 石坂 兼一

講評

最近の学校建築によくみられる中庭を挟んだ、コの字型の空間構成である。立山連峰を望む中庭は、写真で見るとスケールオーバーしている感があったが、現地審査で訪れると、良いスケールであった。富山市の中心部にある学校なので、街区の他の建物とのヴォリュームをあわせるために、セットバックやヴォリュームの分節化、外壁の素材等、建築の構成に工夫がみられ、街並みに馴染んだ建築となっている。

入選 富山化学工業(株)第六研究所

建築主
富山化学工業(株) 代表取締役社長 菅田 益司
設計
大成建設(株)一級建築士事務所 グループリーダー 髙村 潔
施工
大成建設(株)北信越支店 役員支店長 吉浜 紀光

講評

クローズドな環境を求められる1階部分飼育エリアのコンクリート打ち放しの壁面と、2階の執務エリアの開放的なカーテンウォール用いた壁面との対比が、美しいファサードを構成している。現在は、1棟の建物だが、将来の全体構想として中庭を囲む分棟形式を提案し、外周部にはクローズドした実験棟、中庭に面しては開かれたコミュニケーションエリアを設けるというコンセプトが明解な建築である。

住宅の部

入賞 山間のコートハウス

建築主
兼松 尚史
設計
(有)青山建築計画事務所 代表取締役 青山 善嗣
施工
米井建設(株) 代表取締役社長 米井 賢治

講評

既存建物の一部を残し、2世帯住宅へ、リノベーションした計画である。既存部分と新設部分が、中庭を挟んで緩やかに結合されている。親世帯と子世帯のリビングや和室は、中庭に面して融合され、寝室などのプライベートスペースは、中庭により区切られている。改築後、内部はムク材を使った家具で統一感を出し、外観は、従来の建物のヴォリュームより低く抑えられ、前面道路からもセットバックし、自然豊かな景観に配慮した建築になっている。

入選 「遊び心」と「内と外の積極的融合」

建築主
鳥内 博志
設計
アルスホーム(株)一級建築士事務所
代表取締役社長 原野 省三
施工
アルスホーム(株)
代表取締役社長 原野 省三

講評

窯業サイディングとガルバリューム鋼板によって分節化された外観の意図は図りかねるが、オーソドックスな平面計画の中に、リビングとテラスを斜めに切り取った開口部の開け方は評価できる。斜めの視線は、内部空間に拡がりを与えるとともに、外部空間を内部へ侵入させ、豊かな空間となっている。

入選 吹き抜けを共有する家

建築主
松田 信樹
設計
聖建築設計事務所 代表 石村 聖一郎
施工
辻建設(株) 取締役社長 辻 明信

講評

吹き抜けのあるリビングを中心に、両サイドに個室が取り囲むというシンプルな平面計画である。この単純な構成を暗示するようなファサードの作り方には疑問が残るが、LDKを挟んだ個室がスキップフロアーで構成されているところが評価できる。吹き抜けに面した開口部にも工夫がみられ家族の程よい距離感を演出している住宅である。