平成16年度 第35回富山県建築賞受賞作品

一般の部

入賞 県営住宅太閤山東団地

県営住宅太閤山東団地

建築主
富山県知事 石井 隆一
設計
富山県建築設計監理協同組合 理事長 稲葉 実
施工
【第1期工事】(第1工区)射水建設興業(株) 取締役社長 夏野 麗子 (第2工区)くみあい建設(株) 代表取締役社長 長田 義次
【第2期工事】(第1工区)塩谷建設(株) 髙田建設(株) (代表)塩谷建設(株) 取締役社長 塩谷 雄一 (第2工区) 砺波工業(株) 取締役社長 有川 成正
【第3期工事】(第1工区)川田工業(株) 鈴木建設工業(株) (代表)川田工業(株) 代表取締役社長 多田 勝彦 (第2工区) (株)東保組 取締役社長 東保 和秀

講評

集合住宅、とりわけ公営のものは基本的機能が満足されれば良しとして、とかく規格性、均質性、経済的合理性が優先され、結果として無機的で退屈、単調なデザインになりがちであった。この作品はそうした傾向を否定したもので、基本的機能の満足は住のボトム・ラインであって、集住のなかでどのように豊かな生活空間を与えるかを試みた作品である。その為の様々な試みが見られるが、住居群の一単位を一戸から最大三戸までの集合として廊下等の中間領域で分節して住居群に近隣感覚を創り出していること、中庭、立体歩廊、共用テラス、ホールなどの中間領域を、植生等で庭園化したり、路地的に扱うきめ細かいデザインを施し、住居群全体を街的に組織することで豊かさを創出したことが評価された。

入選 融合を計った船体の曲線を持つ工場 協伸静塗(株)社屋新築工事

協伸静塗(株)社屋

建築主
協伸静塗(株) 代表取締役 加藤 一博
設計
ミツデザイン設計事務所 所長 見津 末光
施工
射水建設興業(株) 取締役社長 夏野 麗子

講評

工場建築は機能性、経済的合理性のみに基づいて建てられ、悲しむべきことに、少数の例外を除いて造形的な配慮が殆どなされないのが常である。本作品はその配慮がなされていることが評価された。小矢部川河口の伏木港右岸に面して建つので、その文脈から船のバルジを持った曲面の二階ファサード創り、それを円柱が支えるデザインである。円柱のデザインや色彩計画に多少の工夫が見られるものの、デザイン提案としては曲面ファサードのみであって、単純に過ぎる憾みがのこる。

住宅の部

入賞 O邸再生工事

O邸再生工事

建築主
近江 美郎
設計
(株)おおみ設計 代表取締役 近江 美郎
施工
(有)徳永建設 代表取締役 徳永 正

講評

「吾妻建民家」の保存再生計画である。こうした伝統的和風民家の現代的住宅への再生は、如何に伝統的なものの魅力を保全しつつ現代的アメニティと感覚を挿入し、伝統的コンテキストを魅力的に読み替えて行くかが問題となるのであるが、本作品はその成功例である。基本的な構造と屋根以外はストリップ・アウトして解体除去し、その構造の枠内で内部空間の新しい文脈を創出した。例えば、元は広間であったワクノウチ構造部分を迫力ある玄関ホールとした他、トップライトを持たせた中庭やリヴィング、ダイニング、個室等は、モダンデザインを基本としつつも、既存の和様の梁を露出させ魅力的な空間を創っている。それに対して座敷部分は解体した造作材料をそのまま使用して、伝統的空間を保全している。こうした手法が評価された。

入選 下大久保の家

下大久保の家

建築主
丸山 豊  丸山 宏美
設計
水野建築研究所 水野 敦  水野 桂子
施工
米井建設(株) 取締役社長 米井 賢治

講評

小住宅の限られた床面積を、夏季のワンルーム的な利用から冬季の個室的利用へとフレキシブルに組み替えることを意図したプランニングが評価された。また二階部の諸室の床をスキップさせることで、空間の変化をもたらすと同時に、一階天井裏と子供室床の間に大きな収納スペースを設けことを可能にしている。

入選 横田邸新築工事

横田邸新築工事

建築主
横田 重雄
設計
(株)小倉建築設計事務所 代表取締役 小倉 修
施工
<分離発注方式>

講評

キッチン、ダイニング、リヴィングが一体化した吹き抜け空間はサイズが適切でインティメィトな空間を創り出している。高断熱、太陽光発電を併用してかなりの省エネルギーに成功している。コンパクトに良く纏まった平面計画及び空間計画が評価された。