日別アーカイブ: 2011年2月13日

平成22年度 リハビリテーション医学研修会

平成23年2月12日(土)、リハビリテーション医学研修会が開催されました。
この研修会は、当部会副部会長の野村さんが企画されたものです。
野村さんは福祉住環境コーディネーターとして実務の経験があり、
また金沢医科大学教授の影近謙治先生との面識もあるということで、
今回の企画を立ち上げられました。
まさに野村さんなしではあり得なかった研修なのです!
これからますます需要が増えるであろう、「ご高齢の方や体が不自由な方の
ための住宅改修」に対して、私たち建築士はしっかりとした知識・判断基準
を身に付けていかなければなりません。
そのような社会情勢を考えた時、この研修会は非常に意義深いものだから
是非やろう!ということで役員の意見は一致し、今回の開催に至りました。
影近先生が総合リハビリテーションセンターの元所長で、現在非常勤医師
でいらっしゃるという関係で、市立砺波総合病院健康センター会議室を会場
としました。
ということで今回の研修会は、県青年部会と砺波支部青年部会の共同開催
となっております。
それでは、当日の様子を簡単に振り返ってみたいと思います。
小山部会長のあいさつで研修会は開会し、
まずは影近謙治先生の講演を拝聴しました。
【影近謙治(かげちかけんじ)先生について】
金沢医科大学 医学部 運動機能病態学リハビリテーション科教授。
専門は、リハビリテーション一般のほか、脳卒中のリハビリテーション、
高次脳機能障害、骨粗鬆症、痙性麻痺、脊髄損傷、意識障害で、
現在は(社)日本リハビリテーション医学会 評議委員、金沢医科大学病院の
リハビリテーション医学科長、そして今回研修会の会場となった
市立砺波総合病院の非常勤医師でいらっしゃいます。
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「建築士の実務に役立てるためのリハビリテーション」という題材で、
プロジェクターを使って講演していただきました。
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影近先生の話に真剣に耳を傾ける参加者の方々。
みなさんの、何かを得て帰ろう!という強い意志が感じられます。
講演は、「リハビリテーションとは?」という話から始まり、「地域リハビリテーションの必要性」
「高齢者の特性」についての説明があり、「住環境整備」の話へと繋がっていきました。
短い時間の中ではありましたが、非常にわかりやすく、リハビリテーション、そして住環境整備の
重要性が理解できる内容だったと思います。
少し余談ですが・・・
講演の中で、「大腿骨頸部骨折患者」が今後も増加の一途を辿るだろう、という話がありました。
これは、単純に高齢者の増加に比例して増えていくということなのか?はたまた、過去と現在での
高齢者の生活環境・生活習慣の違いから考えられることなのか?ということを疑問に思いまして、
講演終了後、影近先生に質問しました。
先生がおっしゃるには、食生活の変化によって現代人はかなり骨が弱っているとのこと。
それによって高齢になった時の骨折の可能性も高まっているのです。
つまり骨折の原因となる「転倒事故」が起きにくい住環境整備も必要ですが、食生活をはじめとした
生活習慣の改善も同時進行で行わなければ、先に述べた骨折の増加は止められない、ということです。
ちなみに骨の強化には運動も重要で、歳をとったらもう遅いということはないそうです。
私たち建築士にはあくまでハード面を整える役割がありますが、それだけでは解決しないことが
ある、ということを認識しておく必要があるのではないでしょうか。
影近先生はこのような質問にも気さくに、そして丁寧に答えて下さる方でした。
さて、続きです。
講演終了後は、病院内を見学させていただきました。
まず見学したのは理学療法室です。
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まさにドラマのリハビリ風景でみかける、あの部屋です。
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それぞれの器具について、理学療法士さんから説明を受けました。
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器具を実体験する青年部会の竹内さん。
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続いて作業療法士さんにより、設備の説明がありました。
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これはキッチン作業の練習用設備で、高さが自由に変えられるんです。
デジタル表示で「76」という数字が出ていますが、床からカウンタートップまでの
高さが76cmだということです。
作業練習だけでなく、キッチンの購入・改修にも大変役立ちそうです!
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トイレ使用時に、その人に合った手すりの位置を計測できます。
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これがすごい!
浴室作業訓練設備ですが、あらゆるところに手すりがついており、そのどれもが可動式です。
私たちが、当たり前だと思っている手すりやカウンターの高さ。
トイレの手すりの高さやユニットバスの手すりの位置はメーカー基準で決まってしまっていたり
しますが、それは本当に使用者のことを考えたものとなっているのでしょうか?
このような設備の存在は、患者さんによって手すり等の適した寸法・位置がまちまちである
ということを示しています。
私たち建築士には、個人個人に合わせたキメ細やかな対応が求められているのではないでしょうか。
その後は、リハビリとは関係ありませんが、建築士として興味の惹かれる場所へ・・・
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何だか分かりますか?
これはヘリポートです。この病院ではそれほど使用頻度は高くないそうです。
山P主演のドクターヘリのドラマを見ていた私はちょっと興奮しました♪
天気が悪かったので、室内より眺めるだけということになり残念でしたが、
実際に見ることができたのは非常に貴重な経験でした。
【ヘリポートのデータ】
ヘリポートの地表面からの高さは約41メートル。
滑走路の強度は全備重量の5.5トンに絶えうる強度。
着陸帯は長さ21メートル幅17メートル(全広さ約30m×約25m)
非公共用ヘリポート施設としては県中央病院、富山市民病院、高岡市民病院
に次いで4番目に完成したものです。
この施設の利用を予定する航空機は、富山県消防防災ヘリ、石川県岐阜県消防防災ヘリ、
富山県警ヘリ、福井県消防防災ヘリ等となっています。
ということは、使用頻度が高くない、というのは良いことなのでしょうね。
次は、屋上から一気に地下にまで移動します。
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さてさて今度はどこでしょうか?
ここは免震装置がある地下ピットです。
免震装置・制震装置というコトバが聞かれるようになって久しいですが、
大規模な建築に携わる経験がなかった私は初めて見る場所でした。
※免震部材(積層ゴム部材)の耐用年数は60年(ただし発生地震の影響にもよる)とのこと。
 
ゴム部材としてかなり寿命が長いように思います。
特殊なゴムを使用しているのか、地下という環境から紫外線等の影響を受けにくいため
劣化の進行が遅れるのでしょうか・・・
また調べてみたいと思います。
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これが積層ゴムを用いた支承です。
基礎と建物は事実上ここで切り離されており、地面からの地震エネルギーを
ゴム部分で逃がす仕組みになっています。
理屈を考えると、ナルホドという感じですが、実際に目で見ると建築技術の
スゴ味が伝わってきました!
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部分的にスプリングを用いた支承も使われていました。
構造的なことは詳しくないので分かりませんが、違う種類の支承を複合的に用いる
というのは初めて知りました。
ヘリポート・免震ピットと、普段は入ることが出来ない場所ですが、
管理会社の方の立会いの下、特別に見学させていただき大変勉強になりました。
野村さんの根回し、さすがです!!
というところで1時間ほどで病院内見学は終了し、会議室へ戻ります。
次は参加者を2グループに分けて意見交換会です。
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建築士と理学療法士・作用療法士・社会福祉士等が普段疑問に思っていることを
ぶつけあって、互いの仕事への理解を深め、また互いの連携の可能性を探ること
を目的としていました。
実際に議論は白熱して、それぞれのジレンマのような部分も垣間見られ、
最終的には「エンドユーザーのために」という考えを中心に、全員で
ひとつの方向を見定めた話しに発展していき、団結感のようなものを
感じることができました。
やはりお互いプロ同士ということで、それぞれにプライドを持って業務に臨んでいる
姿勢が感じられました。
そして、そのような人たちが団結することに、大きな可能性を感じることができた、
そのような意見交換会だったと思います。
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最後に影近先生から講評をいただきました。
先生も、それぞれがない部分を補い合う今回の研修には意義を見出されており、
これからの活動にも期待されておりました。
というところで、今回の研修会は滞りなく終了いたしました。
この後は場所を移して懇親会を行いました。
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今回の研修会を協同開催して下さった富山県建築士会砺波支部青年部会長として
長島さんがあいさつされました。
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影近先生に乾杯のご発声をいただき、会はスタート!
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みなさん、研修会への充実感を感じていらっしゃったようで、
おいしいお酒がすすんでいた模様です♪
しかしながら、今回の研修会では互いの仕事の問題点や新たに取り組んでいかなければならない
課題も見えました。
更に発展した第2回目の研修会を行うことができるように、今後はその課題を意識しながら
互いの業務に取組み、その成果・また新たに生まれた疑問等を持ち寄ることができるように
努力していくことが重要だと思います。
当部会が大切にしているのは、「やりっぱなしにしないこと」。
これからも次へつなげる姿勢で事業に取り組んでいきましょう!
影近先生、お忙しい中、長い時間お付き合いいただきありがとうございました!
先生なくしては成り立たなかった今回の研修会で、先生が与えてくださった
きっかけを無駄にしないように頑張っていきます!
また、お忙しい中、積極的に研修会に参加して下さった、建築士・理学療法士・
作業療法士・社会福祉士等のみなさん、本当にありがとうございました!
そして、この研修会開催のため、各所への連絡・打合せ等忙しく動き回り、
尽力してくださった野村さん、本当にお疲れ様でした。
研修委員長 荒井